歌を歌い始めた時からずっと自分の音楽に嘘をつかず、43年間ひたすらその創造魂を表現してきた「エンケン」こと遠藤賢司が、約2年ぶりのニューアルバム『ちゃんとやれ!えんけん!』をリリースする。タイトル曲をはじめ、新録された「夢よ叫べ ―2012―」まで全10曲、そのどれもに自身の心を削る音をギリギリまで込めたこのアルバムは、いつも通りのエンケンに違いないが、大震災と原発事故で絶望に打ちのめされた私たちにとっては、心の奥深くを奮い立たせる音として響いてくるはずだ。今、この時代にとってもたいへん重要である本作品について、エンケン自身に語っていただいた。(Interview:加藤梅造)
人間のDNAを振り返った時に一瞬で人類の創世まで戻る音
──約2年ぶりのニューアルバムが完成しましたが、アルバムを作ろうというきっかけはあったんですか?
今回はエレキギターをものすごくやりたくなったんだよね。エレキのアルバムを作りたいなと。最近のライブでもエレキの曲が増えてきていて、まず「ちゃんとやれ!えんけん!」が曲としてできたんだけど、その曲名がやっぱりアルバムのタイトルになったんだ。いつアルバムを作ろうというのは決めてないけど、アルバムを作りたくなる躁の状態が2年ごとに来るのかもしれないね(笑)
──ちなみに一番最近にできた曲は何だったんでしょうか?
「心の奥まで抱きしめて」は録音の1週間ぐらい前にできたのかな。俺はマカロニ・ウエスタンやフラメンコが好きなんだけど、やっぱり昔の日本のポップスが好きなんだよね。郷ひろみとか田原俊彦とか松田聖子とか。郷ひろみが好きだって言うとへんに誤解する人もいるけど、俺は誤解されてもいいんだ。だっていい歌手だから。ものすごく上手いよ。特に昔の曲がいいけど、最近ではアチチ(「GOLDFINGER '99」)が凄いよね。だから「心の奥まで抱きしめて」はマカロニとスパニッシュ・ギターとアチチが混じった感じになっているね。
──確かに昔の歌謡曲っぽい懐かしさがある曲でした。
形だけ向こうの洋楽みたいにしたものがロックだとは全然思ってない。そういうのは嫌なんだ。「国際化してますか? 私は日本人じゃないみたいでしょう」って言いながら生きていく国って最低だと思う。俺はみんなが語っているようなロックや音楽はほとんど聴いているよ。だけどそんなことわざわざ言わないよね。知ってて当たり前だから。それよりもっと大事なものがこの国にはあるだろうと。三波春夫とか岡本太郎とか、それが日本人の血なんだから。もちろんニール・ヤングやボブ・ディランは好きだけど、だからといって彼らに負けたとは一度も思ったことはない。そういう意味で俺は自信過剰なんだ。でも、日本中の一人一人がそうあるべきだと思う。
──エンケンさんの歌には「俺はいつでも最高なのさ!」というテーマが一貫してあると思いますが、今回のアルバムではそれを特に感じました。
今までもずっとそうやってきたんだけど、今回は特にそれを荒っぽくやったという感じがする。何度も曲をやるといろいろ直したくなるんだけど、今回はそれをやめたんだ。作った時の原初の叫びの方が重要かなと。
──特にエレキの荒っぽい音は、ライブで聴いた時の感じそのままで、アルバムで言うとライブ盤の『不滅の男 遠藤賢司バンド大実況録音盤』に近い印象でした。
エレキでも生ギターでもそうだけど、心を削る音が聴きたいんだ。削る時のざらざらって音を。なんでかっていうと、それは自分の心、創造魂に直に繋がる音だから、それをいっぱいに溢れさせたいんだよね。今度のアルバムではエフェクターは一切使ってなくて、ギターをアンプに直接繋いで、間にはシールドがあるだけ。だからライブ盤っぽいのかもしれないね。
あとコンプレッサーも使ってない。コンプレッサーで音を整えるとみんないい音になっちゃうんだけど、それはどっかで嘘だなって思うんだよね。やっぱりその人が出したそのまんまの音をアルバムにするのが一番正しいんじゃないかな。俺は音で絵を描こうと思ってるんだ。簡単に言うと、岡本太郎だと思ってくれてもいいけど。もちろん失敗した音や迷っている音もあるけど、ちゃんとできた時の音は何十億光年をも包む音だよね。人間のDNAを振り返った時に一瞬で人類の創世まで戻る音。それは未来永劫だから。それを表現したいんだ。
──今回のアルバムでいうと4曲目の「ア!ウ!」は、そういった原初の音に近づこうという曲になっていますよね。
いや、近づこうというのではなくて、今その瞬間がビッグバンなんだよ。今、ここ。過去も未来もなくて「今」を描きたいんだ。だから「俺は地球で初めて叫んだ男」というのは今のことを歌っているんだよね。もっと端的に言えば、言葉のない時代に人間が「ウ!」っと発した瞬間が創作の原点だと思っている。古代人がアルタミラ洞窟の壁を「ウウッ」と削った時、それはその人にとっての言葉だよね。それを音にしたいんだ。それはどんな仕事でもそうだよ。俺はそういうものしか見たくないんだよね。
